第一回学会発表 その2 「つばさ」における寺内貫太郎一家イズム (ももちゃ)


~はじめに~

平成のホームドラマ「つばさ」これには良い意味での昭和ノスタルジーが入っている。

昭和とは私たちが過ごしてきたひとつの時代であり、昨今のブームでもある。

ここにNHK朝の連続ドラマ小説「つばさ」を、私の勝手な推測及び妄想を交え、

「つばさ」にある寺内貫太郎一家イズムを検証してみようと思う。

まず寺内貫太郎一家とは何ぞや?

ある時期民放のTBSは「ドラマのTBS」と言われ、数々のヒットドラマを手掛けて来た。

その中でホームドラマと言えば「時間ですよ」「ありがとう」等々、

数えたらキリがないほどの名作があがる。

その中でも大ヒットしたのが、昭和49年に放送された「寺内貫太郎一家」である。

昭和の名プロデューサーと言われた久世光彦が、

小説家向田邦子を脚本に迎え、タッグを組んだ問題作である。

「つばさ」にはこの「寺内貫太郎一家」をオマージュとして、

数々の寺内貫太郎貫イズムを感じる事が出来る。

「つばさ」の良く練られた脚本、そして演出・撮影。

「つばさ」は、この寺内貫太郎一家のフィルターを通して観ると、

今迄が謎だと思っていた事が謎でなくなり、

そしてまた今迄普通だと思っていたシーンが謎となり次々と浮かび上がってくるのだ。

この事はパズルを解くが如く、実に厄介で楽しい事となった。

平成ドラマ「つばさ」はそのドタバタさで観る者を限定させた。

それは紛れもない事実ではあるが、実はそうではないのだ。

この事は追々検証していく事にするので、今回は割愛させていただく。

寺内貫太郎一家(以降寺貫)はさらにその上を行くドタバタ劇であった。

当時の時代を考えてもその内容は今観ても驚く事ばかりで、

ある意味時代の緩さもあったのではないだろうか?

正直一話一話の脚本は、「つばさ」のほうが良く出来ているし、

ディテールも細かく、さすが2009年のドラマと言える。

寺貫に関しては、今観てみると物凄く大雑把に出来ている感じがする。

しかし、逆に内容が単純な分、ストレートに観る者の感情に突き刺さってくる。

視聴者は安心出来るワンパターンが好きなのだ。

「つばさ」がディズニーランドとするならば、「寺内貫太郎一家」は浅草花やしきか。

1990年代昭和から平成・・・、ここに何かのヒントがあるような気がする。

今回は数々の謎から以下の事項について検証してみようと思う。

しかし、本日は時間がないようなので「赤の想い」だけにしよう(笑)

この「赤の想い」も「つばさ」における寺貫イズムのひとつなのだ。

さて、ここで「つばさ」第一回の登場である。

始まってすぐに玉木つばさが台所に来て、ラジオのスイッチを入れる。

この携帯ラジオの色が赤なのである。

なぁんだ、普通の携帯ラジオじゃないか?

と普通は思うが「つばさ」を観た人であれば、

ラジオが以降伏線となってくる事はお分かりであろう。

私はこのラジオの赤色に着目した。

あきらかにこの携帯ラジオは後から塗ってあるのだ。

要は色を塗り替えているのである。

なぜ?

NHKだから特定メーカーと断定出来るのを避ける為?

まぁ、それもあると思うが、では何故赤く塗る必要がある?

別に赤色でなくても良いのではないか・・・。

とかく赤色には覚醒効果があるらしい。

最初に赤いラジオをアップで見せ、しかもここでスイッチを入れる動作をも見せている。

この事により、赤で観る者を覚醒させ、
「これから凄いもの作るぜ」と、

これから前代未聞の「つばさ」が始まる合図をラジオのスイッチとだぶらせて見せて、

「つばさ」に懸けるスタッフの意気込みをも映像に取り込んだのではないか。

ここはもちろん演出の魔術師・西谷さんの戦略でないかとも推測出来る。

赤のイメージとして、

革命・情熱・熱い・燃える・力・勇気・女の子・エネルギー・

勝利・激しい・危険・派手・活発・温かい・そして愛

赤好きな人は

感情表現豊かで前向きな人

激情・興奮・何事にも向かっていく人、らしい。

すべての事柄が「つばさ」にリンクしていると思う。

もちろんこれはこの「つばさ」に懸けた、後藤チーフプロデューサーの想いでもあると思う。

そして赤ちゃんは生まれて最初に認識する色が赤らしい。

だから赤ちゃんと言うのかは分からない。

赤に込められた想いはこれだけではない。

もちろんここにも寺貫イズムは存在している。

寺貫ドラマの中ではいつも赤がアクセントに所々散りばめられているのだ。

左とん平扮するタメさんの赤いとっくりセーターや帽子。
お手伝いさん美代ちゃん役の浅田美代子の、ストライキ中の赤い鉢巻や赤いエプロンや衣装などの色。

そして前作「時間ですよ」の挿入歌赤い風船。

比較的地味なセットの色に対して、わざとと言っていいくらい赤が目を引く。

そして美代ちゃんの「私赤が一番好きなの」と言うセリフまで。

久世ワールド全開である。

赤色を有効に使用している名作はまだある。

皆さんは「幸せの黄色いハンカチ」という映画はご存知だろうか?

高倉健・桃井かおり・武田鉄也出演の1977年10月公開の山田洋次監督作品である。

この映画のラストシーンはこの作品の最大の見せ場で、

たくさんの黄色いハンカチが青空に舞っている感動するシーンである。

えっ、だからこの映画は黄色でしょ?と思うはずだ。

タイトルがずばり、黄色いハンカチという事で、観る者に既に刷り込まれているのだ。

確かに監督がこの黄色を際立たせる為に、映画の中では徹底的に黄色を排除して、

撮影している。

だからこの映画には黄色は最後のシーンにしか出て来ない。

しかし、この映画にはもっと有効に使用されている色がある事に気がついたであろうか?

それが赤なのである。

武田鉄也が運転する赤いファミリアなどはその筆頭であろう。

そのクルマはこの映画の第二の顔となっている事は紛れもない事実であるし、

この映画を観ると赤色が有効に使用されているのが分かるはずだ。

赤という色の持つ効果は、計り知れないものがある。

蛇足ではあるが、この「幸せの黄色いハンカチ」がリメーク版として

アメリカ映画「ザ・イエローハンカチーフ」として、今日6月26日から公開である。

以上の事から

「つばさ」は寺内貫太郎一家をかなり強力に物語のベースとしている事が分かる。

たかが赤い携帯ラジオではあるが、このワンシーンの中からでも、

「つばさ」スタッフの強烈なメッセージが伝わってくるのである。

これから始まる全てのスタッフの見えない何かへの挑戦

怒涛のつばさ嵐の前の静かなさざ波が開始5秒で垣間見えてくるのだ。

「つばさ」の本当の凄さはまだまだこれからなのである。

今後もこの寺内貫太郎一家のフィルターを通した「つばさ」を

徹底的にバラバラにして検証していきたいと思っている。

Posted: 7月 14th, 2010 under 研究論文.